結論を先に置きます
結論からいきます。
今回の参考サイトは、「決算前に株価が下がるのはなぜか」という一般的な株式解説記事はそれらしく書かれているのに、
記事中に『億り人ITSUKIが教える資産7.7増の投資術』という誘導バナーが複数回差し込まれ、
決算の話とは無関係な高利回りの勧誘につながっている、という形でした。
これは、以前編集部で検証した「三菱UFJの株価解説記事」「スズキの株価解説記事」と同じサイト・同じ導線です。
ただし、この案件そのものが詐欺だと断定できる公的な証拠は確認できていません。
ここでは「詐欺だ」と決めつけるのではなく、なぜ気をつけたほうがいいのかを、公的資料と公開株価データで確認します。
最初に言うと、私ならこの誘導には乗りません。
同じ手口を3回目見ると、もう偶然とは思えません。
まず3つに分けて見る
こういう記事は、ぜんぶをまとめて「怪しい/怪しくない」で見ると判断を誤りがちです。
そこで、入口・中身・出口の3つに分けて見ていきます。
どこが無難で、どこで引っかかりやすいのかが、はっきりします。
3つに分けると、違和感の場所がはっきりします。
私なら、決算の解説と高利回りの誘いを同じ信用で見ません。
表は左右にスクロールできます
| パート | 何が書いてあるか | 見立て |
|---|
| ①入口 | 「決算前に株価が下がるのはなぜ?好決算でも売られる理由」という、多くの個人投資家が気になるテーマの解説記事 | 関心の高い人を広く集める入口 |
| ②中身 | 利益確定売り・市場全体の地合い・出来高の見分け方など、一般的な株式解説 | 事実としては概ね無難 |
| ③出口 | 記事中に複数回『億り人ITSUKIが教える資産7.7増の投資術』へ誘導 | ここが一番の注意点 |
ここまでで、入口・中身・出口の3つに分けて見ると違和感の場所がはっきりする、というところまで来ました。
でも「自分が読んでいるこの記事はどの型に当てはまるの?」と迷うこともあると思います。
読んでいる記事のURLを送ってもらえれば、どこが入口でどこが出口か、一緒に並べて確認できます。

投資詐欺検証ラボLINE相談窓口
①入口:「決算前の株価下落」という誰もが気になるテーマ
入口は「決算発表前に株価が下がるのはなぜか」「好決算でも売られるのはなぜか」という、
個人投資家なら誰でも一度は気になるテーマです。
決算をまたぐ銘柄を持っている人なら、検索してこの記事に行き着く可能性は高いでしょう。
ここで一回立ち止まりたいのですが、
決算の話題で来た人に、記事の途中で高利回りの話を見せる、
という設計自体が、後で効いてきます。
入口が身近な悩みだからこそ、私は出口を見ます。
『みんなが気になること』は、それだけで安心材料にはなりません。
②中身:決算・株価変動の解説自体は概ね無難
中身の株式解説は、実は取り立てておかしなことは書いていません。
決算発表前の利益確定売り、市場全体の地合い、市場の期待値(コンセンサス)を下回った場合に好決算でも売られること、
出来高の変化で本格的な下落と一時的な下落を見分けるという話は、
一般的な株式解説の範囲です。
だからこそ、読んでいるうちに「この書き手は分かっていそう」と感じてしまう。
ここがミソです。
中身が無難でも、その先の誘導まで安全とは言えません。
私なら、決算解説への信頼を無料レッスンに持ち込みません。
ただ、こうした解説は「決算前後で株価が動く理由」を語っているだけで、
読者一人ひとりがその情報で儲かることを示すものではありません。
金融庁は資産形成の基本で、長期・分散・積立といった基本を示していますが、
特定の手法で短期間に資産を何倍にもする方法を保証してはいません。
「決算の解説が正しいこと」と「その先で勧められる投資が安全なこと」は、別の話です。
③出口:『資産7.7倍』への誘導
問題は出口です。
出来高と株価の関係を解説したすぐあとで、急に
「投資で稼ぎたいなら、億り人が資産の増やし方を無料で教えてくれるマンツーマンレッスンがある」
「教えてもらった方法を試したら、資金7.7倍を達成したと口コミでも話題」
といった話に切り替わり、外部サイトへ誘導されます。
この誘導バナーは、記事中に同じ画像で複数回繰り返し置かれていました。
画像:参考記事内に差し込まれていた誘導バナー(表記が一部異なるバリエーション)のスクリーンショット。金融庁は詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!で、
「知り合いからの紹介やSNS等を通じて…必ず儲かるとうたう高利回りな投資話に勧誘され」るケースを典型例として挙げ、
「必ず儲かります!元本も保証します!」といった断定的な勧誘に注意を促しています。
「無料」「短期で◯倍」という強い言葉が出てきた時点で、まず疑ってよい場面です。
国民生活センターも、SNSをきっかけとする消費者トラブルについて、
「著名人を名乗ったり、つながりを示したりして投資を勧誘された」という相談が2022年度と比べて約9.6倍に急増していると報告しています。
平均契約購入金額は約644万円と、決して小さな金額ではありません。
今回の『ITSUKI』は著名人ではなく無名の自称専門家ですが、実績を強く見せて信用を作るという骨格は同じです。
警察庁の令和8年上半期の発表でも、SNS型投資詐欺の被害額は797.9億円(前年同期比+444.9億円)と、半年間だけで過去最悪を更新しています。
誘導先で名乗る「元証券マンITSUKI」を確認する
誘導バナーをクリックすると、stock-info.jimdofree.comという別サイトに移動し、
そこで「元証券マンITSUKI」を名乗る人物の実績が紹介されます。
運営者の会社名・住所・特定商取引法に基づく表記は、編集部が確認した範囲では見当たりませんでした。
消費者庁の通信販売広告Q&Aは、事業者の氏名・名称について「通称や屋号、サイト名のみを表示することは認められません」としています。
『無料レッスン』の先で有償のサービスに進む場合、この表示義務が適用される可能性があります。
経歴や実績が具体的なほど、私は裏取りを先にします。
数字が細かいことと、本当であることは別問題です。
画像:誘導先サイトに掲載されていたSNS投稿とSBI証券のスクリーンショット(誘導先サイト掲載分)。この画面では、『元手300万から3ヶ月で2300万超えた』という投稿と、SBI証券の資産残高2,353万円という画面が並べて紹介されています。
300万円が2300万円になったとすると、倍率は約7.7倍。
バナーの見出し『資産7.7増』は、この投稿の数字が根拠になっているとみられます。
ただし、この画面が本当に投稿者本人の資産であるか、いつの時点のものかは、誘導先の掲載情報のみでは確認できません。
画像:誘導先サイトに掲載されていたSNS投稿と証券アプリの損益画面のスクリーンショット(誘導先サイト掲載分)。もう1件は「今年どのくらい増えたかと見てみたら合計損益1500万超えてた」という投稿です。
いずれも本人の自己申告であり、第三者機関による裏付けは確認できません。
『ITSUKI』または関連する屋号が、金融庁の無登録で金融商品取引業を行う者の名称等についてに掲載されているかを編集部で確認しましたが、
本稿執筆時点(2026年8月)では該当する記載は見当たりませんでした。
ただし金融庁自身、このリストについて「掲載されていない者であっても、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ます」と注記しており、
掲載がないことは、安全性を保証するものではありません。
確認ポイント
分析マン的メモ:「リストになし」は「安全」ではない
無登録業者リストは、金融庁が警告を行った時点で掲載される仕組みです。
まだ警告に至っていない、あるいは投資助言という契約形態を取っていない場合、
リストだけでは実態を判断できません。
金融庁は監督指針で、会員登録をしないと情報を受け取れない仕組みを投資助言・代理業の登録が必要になる典型例として挙げています。
『ITSUKI』のようにLINE登録という無料の入り口から始まる形は、この判断をいっそう難しくします。 口コミの銘柄「3倍・9.6倍」は公開株価と一致するか
誘導先のサイトでは、「1か月で株価3倍」「1か月で株価9.6倍」という見出し付きのチャート画像で、
『トラース・オン・プロダクト(6696)』『フォーサイド(2330)』という銘柄名が紹介されています。
編集部で、日本経済新聞のトラース・オン・プロダクト株式情報、日本経済新聞のフォーサイド株式情報で、それぞれの直近の値動きを確認しました。
具体的な銘柄名と倍率が出てくると、私は必ず数字を追います。
言ったもの勝ちにさせないためです。
画像:誘導先サイトに掲載されていた株価チャート画像(誘導先サイト掲載分)。画像:誘導先サイトに掲載されていた株価チャート画像(誘導先サイト掲載分)。表は左右にスクロールできます
| 銘柄 | 誘導先の主張 | 編集部が確認できた公開株価データ(2026年8月時点) |
|---|
| トラース・オン・プロダクト(6696) | 1か月で株価3倍 | 年初来では安値236円→高値491円で約2.1倍(直近値は290円前後) |
| フォーサイド(2330) | 1か月で株価9.6倍 | 年初来では安値69円→高値185円で約2.7倍(直近値は73円前後) |
いずれの銘柄も、短期間で株価が動く局面があったこと自体は事実です。
ただ、編集部が確認できた公開株価データの範囲では、
誘導先で語られている『3倍』『9.6倍』という倍率とは一致しませんでした。
チャートの起算日や期間が示されていないため、虚偽だと断定はできませんが、
少なくとも「この銘柄を買えば9.6倍になる」という説明ではないことは、公開情報から確認できます。
注意
体験談の倍率は、鵜呑みにしない
「1か月で◯倍」という話は、
いつ買って、いつ売ったかで、いくらでも大きく見せられます。
個別の体験談だけを根拠に、次の投資判断をするのは避けたいところです。
気になる銘柄の値動きは、証券会社のツールや東証の適時開示情報で、自分でも確認できます。
口コミの倍率と公開株価データを照らし合わせると、
少なくとも『言われている通りの倍率』ではなかった、というところまで確認できました。
もし今、似たようなチャートを見せられて背中を押されているなら、銘柄名とチャートのスクショをLINEで送ってください。一緒に数字を確認します。

投資詐欺検証ラボLINE相談窓口
同じ手口はこのサイトで繰り返されている
今回、編集部が特に注目したのは、この誘導が『今回だけ』ではないという点です。
参考サイト(ifs-assessment.jimdofree.com)は無料ブログサービス上にあり、
運営者の会社名・住所・特定商取引法に基づく表記は見当たりません。
そのうえで、編集部が過去に検証した別の個別株解説記事でも、全く同じ誘導バナーが使われていました。
同じ画像・同じ文言を繰り返し使う運営は、
記事のテーマより誘導そのものが目的だと、私は見ます。
編集部では以前、三菱UFJの株価が安い理由を解説する記事と、スズキの株価が堅調な理由を解説する記事の途中に、
今回と同じ『億り人が教える資産7.7増の投資術』バナーが差し込まれているのを確認しています。
今回の『決算前の株価下落』解説記事と合わせると、3つの異なる個別株テーマの記事で、同じ誘導が使われていたことになります。
また、この『元証券マンITSUKI』を名乗る誘導は、株の解説記事だけでなく、
実在するアナリストの経歴を紹介する記事に紛れ込んでいた事例も、編集部の別の検証で確認済みです。
入口のテーマを変えながら、出口だけは同じという組み立ては、
特定の企業や記事を狙い撃ちしているのではなく、
幅広い読者を同じ誘導先に集めるための仕組みだと考えられます。
注意
「入口の違い」に惑わされない
決算の解説でも、メガバンクの株価解説でも、自動車メーカーの株価解説でも、
実在するアナリストの経歴紹介でも、出口が同じ誘導先なら、警戒レベルは同じです。
記事のテーマが変わっても、リンク先のドメインが同じかどうかを確認する習慣をつけると、見分けやすくなります。
こんな誘導が来たときの動き方
「株の解説を読んでいたら、途中で高利回りのレッスンに誘われた」ときの、
落ち着いた動き方を順番にまとめます。
こういう流れに入ると、途中で断りにくくなります。
急かされたら、判断ではなく距離を取る場面です。
- 1短期間の高倍率(1か月で◯倍、半年で◯倍など)が出てきたら、まず一回手を止める
- 2そのブログや誘導先に運営者名・会社名・特商法表記があるかを確認する
- 3勧めてくる相手の会社名・登録番号を金融庁の登録業者一覧で照合する
- 4「無料」の先に、有料商材・送金・運用代行がないかを確かめる
- 5口コミで挙げられている銘柄名があれば、自分でも公開株価データを確認する
- 6不安なら、申し込む前に消費生活センター(電話188)や家族に相談する
注意
急かされたら、それ自体がサイン
「今だけ」「枠が埋まる」と急かされるほど、立ち止まる価値があります。
金融庁も詐欺的な投資勧誘で「必ず儲かります!元本も保証します!」といった断定的な勧誘を典型例として挙げています。
断定や保証が出てきたら、まず疑ってよい場面です。 チェックリスト
迷ったときに、ひとつでも当てはまったら立ち止まる目安です。
チェック項目が多いのは、面倒にするためではありません。
大きなお金を払う前に、ここで止まれるかが大事です。
- 「1か月で◯倍」「半年で◯倍」と高倍率をうたっている
- 根拠が口コミ・体験談だけで、公表資料や公開株価データがない
- 運営者名や特商法表記のない無料ブログに載っている
- 「無料レッスン」から個別チャットや外部サイトへ誘導される
- 勧めてくる人や会社の登録番号・実体が確認できない
- 同じ誘導バナーを他の記事でも見たことがある
まとめ
最後に、3つの分け方でもう一度おさらいします。
詐欺だと断定する必要はありません。
ただ、私なら無難な決算解説から高利回りへ進む導線には乗りません。
| パート | 結局どうだった? |
|---|
| ①入口 | 「決算前に株価が下がるのはなぜ?」という、多くの個人投資家が気になるテーマで集客している |
| ②中身 | 決算・株価変動の解説自体は概ね無難で、信用を作る役割 |
| ③出口 | 『資産7.7倍』の無料レッスンへ誘導。同じ手口は他の記事でも確認済み |
もう一度だけ。
この案件が詐欺だと断定できる公的な証拠は、確認できていません。
それでも、無難な株の解説で信用を作ってから短期の高利回りへ誘うという流れが、
異なるテーマの記事で繰り返し使われていること、
そして口コミの倍率が公開株価データと一致しなかったことは、事実として確認できました。
決算前後の株価変動を調べること自体は、悪いことではありません。
大事なのは、決算の解説と『資産7.7倍』のような誘いを、
きちんと切り離して見ることだと思います。
確認ポイント
判断に迷ったら
「この誘導、申し込んで大丈夫かな」と迷ったときは、
申し込む前に第三者に相談するのが安全です。
編集部のLINEでも、気になった案件の見方を一緒に整理できます。