結論を先に置きます
結論からいきます。
SNS広告や検索結果に表示される、
「日本人なら誰でも、たった1か月で借金を完済できるチャンスが!」という見出しの記事——
実はこれ、NHKの報道サイトを装った偽広告です。
そこには、ユニクロを展開するファーストリテイリング会長・柳井正氏の写真とインタビューが使われ、
AIが仮想通貨を自動売買して利益を出すという投資サービス『Grovestion(グロベスチョン)』への登録が勧められています。
まず結論です。
Grovestionには登録・入金しないでください。
理由は3つあります。
① 柳井正氏の写真とインタビューが使われていますが、
本人が関与した事実は確認できません。
むしろ運営元のファーストリテイリングは、この種の広告について
「弊社社長である柳井正とは一切関係がなく、虚偽の内容を含んでおります」と公式に否定しています。
② 登録すると、専任担当者を名乗る人物から電話がかかってくる仕組みになっており、
初回入金として3万1,000円が案内されます。
③ 登録先として案内される『KairoMaxPath』の特定商取引法の表記にある事業者IDは、
国税庁の法人番号公表サイトで確認したところ「存在しません」と表示されました。
この3点を、公的資料と広告の実物スクリーンショットで順番に確認していきます。
結論だけ先に言うと、私ならこの広告には絶対に乗りません。
有名な経営者の名前、NHK風の見た目、電話勧誘——
危ないサインが重なりすぎています。
まず3つに分けて見る
こういう広告は、全部をまとめて『怪しい/怪しくない』で見ると、
判断を誤りやすくなります。
そこで、①発信・②勧誘導線・③運営実態の3つに分けて見ていきます。
どこが事実で、どこに注意すべき点があるのかが、はっきりします。
3つに分けると、危ない場所がはっきり見えてきます。
私は広告の見た目より、運営者・お金・誘導先を先に見ます。
表は左右にスクロールできます
| 切り口 | 広告・登録先で言っていること | 確認できた事実 |
|---|
| ①発信 | NHKの報道という体裁で、柳井正氏が『AIトレーディングプログラム』を開発したと紹介 | 本人・運営元は無関係と公式に否定。著名人なりすまし広告の典型パターンと一致 |
| ②勧誘導線 | 「残り9枠」「1,200人限定」と登録を急がせ、登録後は電話で案内 | 専任担当者と称する人物が電話で初回入金(3万1,000円)を案内する構造 |
| ③運営実態 | 登録先『KairoMaxPath』は所在地・電話番号・事業者IDを表記 | 事業者IDは国税庁の法人番号公表サイトで『存在しません』と表示 |
ここまでで、3つに分けて見ると注意すべき場所がはっきりする、というところまで来ました。
でも、『自分が見ている広告は本物?』と迷うこともあると思います。
見ている広告のスクリーンショットを送ってもらえれば、一緒に確認できます。

投資詐欺検証ラボLINE相談窓口
①発信:NHK風のなりすまし広告と本人の否定
まず、広告そのものを見ていきます。
表示されるのは、NHKのニュースサイトにそっくりな見た目のページで、
見出しには「日本人なら誰でも、たった1か月で借金を完済できるチャンスが!」とあります。
本文では、柳井正氏について
「優れた実業家であり投資家でもある柳井正氏」が『AIトレーディングプログラム』を開発した、
と紹介されています。
NHK風の偽広告に掲載されていた「インタビュー」の一部。月に369万円の収益という、裏付けのない数字が語られています(画像:偽広告ページより)。インタビューの中では、
「ご自身でも実際に利用しており、大きな成果を得ています。
月におよそ369万円の収益を上げています」
という発言まで載っています。
ですが、この発言を柳井正氏本人がしたという事実は確認できません。
むしろ、ファーストリテイリングは2024年3月、公式に次のように発表しています。
「この度、SNS上で新聞記事やフェイク動画などを装い、
個人情報の入力や金銭の振り込みを促す悪質なウェブ広告が拡散されていることを確認いたしました。
この広告は、弊社社長である柳井正とは一切関係がなく、虚偽の内容を含んでおります」
(ファーストリテイリング「悪質なウェブ広告に関するお知らせ」より)
同社は2021年にも、柳井正氏の名前をかたるSNSアカウントへの注意喚起を出しており、
なりすましへの注意喚起は今回が初めてではありません。
実業家の名前と成功のイメージほど、広告に使われやすいものです。
本人の発信かどうかを、まず公式サイトで確認したいところです。
改めて整理すると、NHKのような報道の体裁と、実在の著名な経営者の名前を組み合わせることで、
信ぴょう性を感じさせる作りになっています。
ですが、その体裁自体が本物である保証はどこにもありません。
②勧誘導線:LINE登録から電話勧誘まで
広告ページを進むと、名前・メールアドレス・電話番号を入力するフォームが現れます。
そこにはこう書かれています。
「Grovestionへの投資をご検討中の方へ:
利用者の皆様に十分なサポートを行うため、登録は1,200名に限定されます。
登録が完了すると、すぐに専任の担当者から電話がかかってきます」
登録フォーム付近の案内文。登録後すぐに電話がかかってくること、初回入金3万1,000円の案内をすることが、あらかじめ明記されています(画像:偽広告ページより)。この案内文には、
「表示される番号に関わらず必ず応答してください。
専任の担当者が、初回の入金(3万1,000円)の流れを含め、質問に答えながらサポートしてくれます」
とも書かれています。
「今すぐ電話に出てください」、「枠は残りわずか」という急がせる文言が並んでいるのが特徴です。
国民生活センターは、著名人を名乗る投資勧誘トラブルについて、
「著名な投資家や経済学者等を名乗っていても、
本人に無断で写真や氏名等を使用した勧誘が横行しています」
と注意を呼びかけており、平均契約購入金額は約644万円と高額になっていると報告しています。
『今すぐ電話に出て』『枠は残りわずか』——
私はこの2つが並んだ時点で、一度立ち止まります。
急がされる場面ほど、考える時間を自分から作るべきです。
ここまでで、登録後すぐに電話がかかってくる仕組みが分かりました。
『もうフォームに登録してしまった』『すでに電話がかかってきている』という方もいるかもしれません。
お金を動かす前に、まずはLINEで状況を教えてください。

投資詐欺検証ラボLINE相談窓口
③運営実態:KairoMaxPathの特商法表記
広告・フォームを経て案内される登録先が、『KairoMaxPath(カイロマックスパス)』です。
公式サイトを見ると、投資サービスではなく、
「現実のビジネス課題に即応するAIスキル習得を」とうたう、
AI研修サービスのように見えるサイトになっています。
登録先として案内されるKairoMaxPathの公式サイト。表向きはAIのトレーニングサービスとして作られており、広告で見た投資の話とは印象が異なります(画像:KairoMaxPath公式サイトより)。投資の広告から誘導される先が、
一見すると投資と関係のないAI研修サービスのサイトになっている——
この時点で、広告の内容とサイトの実態がかみ合っていません。
このサイトの特定商取引法にあたる表記を確認すると、
所在地・電話番号・メールアドレスとともに、
「事業者ID」として4966389006087という13桁の番号が記載されています。
KairoMaxPathの表記にある「事業者ID」。13桁の番号は、国の法人番号と同じ桁数の形式です(画像:KairoMaxPath公式サイトより)。この番号を、国税庁の法人番号公表サイトで直接確認しました。
結果は、「対象の法人番号は存在しません。番号をお確かめのうえ、入力してください」というエラー表示でした。
国税庁は法人番号について、
「国の機関」「地方公共団体」「設立登記法人」など、
法人等に対してのみ指定する番号だと説明しています。
つまり、実在する法人に割り振られた番号でなければ、この形式の番号を名乗ることはできません。
その番号が、公表サイト上に存在しないことを直接確認しました。
注意
「事業者ID」は自分でも確認できます
法人番号は13桁の数字で、国税庁の法人番号公表サイトの検索欄に入力するだけで、
実在するかどうかを誰でも確認できます。
特定商取引法は、通信販売事業者に対して氏名(名称)・住所・電話番号の表示を義務付けています。
表記があること自体は当たり前で、その中身が実在するかまで確認するのが大事なところです。 番号が載っていること自体に、安心してしまいがちです。
私は、その番号を実際に検索してから信じるようにしています。
広告テンプレートの使い回しの跡
広告のフォーム周辺を見ていく中で、気になる痕跡を見つけました。
投資額を入力すると想定利回りを計算する画面のボタンに、
「マーク・カーニーのプロジェクトに応募する」という文言が残っていたのです。
利回り計算画面のボタンに残っていた「マーク・カーニーのプロジェクトに応募する」の文言。柳井正氏ともGrovestionとも無関係な名前です(画像:偽広告ページより)。マーク・カーニー氏はカナダ・イギリスの中央銀行総裁を歴任した人物で、
柳井正氏ともGrovestionとも、本来は何の関係もありません。
この表示は、別の著名人になりすました投資広告のテンプレートを使い回し、
柳井正氏の名前・写真だけを差し替えた際の消し忘れだと考えられます。
広告の見た目を丸ごと信じるのではなく、細部に矛盾がないかを見ることの大切さが分かる箇所です。
この消し忘れを見つけたとき、正直『やっぱりか』と思いました。
同じ型の広告を、名前だけ替えて量産している証拠だと私は見ています。
テンプレートの使い回しという、広告の裏側まで見えてきました。
同じような広告を、著名人の名前を替えて見た、という方もいるかもしれません。
気になった広告があれば、LINEでスクリーンショットを送ってください。

投資詐欺検証ラボLINE相談窓口
なぜ著名人の名前が使われるのか
ここで、著名人の名前や写真が投資勧誘の広告に使われやすい背景を見ておきます。
国民生活センターは、SNSをきっかけとした著名人を名乗る投資トラブルについて、
「SNSをきっかけとして、著名人を名乗ったり、
つながりを示したりして投資を勧誘されたという消費者トラブルが急増しています」
と報告し、
相談件数は2021年度の52件から2023年度には1,629件へと急増し、約9.6倍になったとしています。
確認ポイント
分析マン的メモ:本物の話法ほど、細部で崩れる
著名な経営者のインタビューらしい丁寧な言葉づかいほど、
つい信じてしまいそうになります。
ただ、今回のように細部(表記・番号・使い回しの跡)を1つずつ確認すると、
作り込まれた広告ほど、どこかに矛盾が残っているものです。
これってシンプルなんですよ。
こんな広告が来たときの動き方
『有名な経営者の名前が出てくる投資の広告を見た』ときの、
落ち着いた動き方を順番にまとめます。
こういう広告は、気づけばフォーム入力まで進んでしまいます。
急かされたら、判断ではなく距離を取る場面です。
- 1広告に出てくる著名人の名前が本物でも、その発言が本人のものかを公式サイトで確認する
- 2「1日で◯万円」「たった1か月で完済」など、現実離れした数字が出てきたら、まず一回手を止める
- 3登録先の特定商取引法の表記にある事業者ID・電話番号を、国税庁や検索で照合する
- 4登録後にすぐ電話がかかってくる、急かされる流れは、それ自体が注意すべきサイン
- 5広告や登録先サイトに、無関係な名前・文言が残っていないか確認する
- 6不安なら、入金する前に消費生活センター(電話188)や家族に相談する
注意
急かされたら、それ自体がサイン
『残り9枠』『今すぐ電話に出て』と急かされるほど、立ち止まる価値があります。
金融庁は詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!で、
断定的な利益の強調や出金トラブルへの注意を呼びかけています。
断定や『必ず』が出てきたら、まず疑ってよい場面です。 チェックリスト
迷ったときに、ひとつでも当てはまったら立ち止まる目安です。
チェック項目が多いのは、面倒にするためではありません。
大きなお金を払う前に、ここで止まれるかが大事です。
- 著名な経営者・有名人の名前や写真が広告に使われている
- 「1日で◯万円」「たった1か月で完済」など現実離れした利益を強調している
- 登録後すぐに電話がかかってくる、または「残りわずか」と急かされる
- 特定商取引法の表記にある事業者ID・電話番号を自分で照合していない
- 広告や登録先サイトに、無関係な別の名前・文言が残っている
- 運営会社の所在地・連絡先が実在するか、自分では確認できていない
まとめ
最後に、3つの分け方でもう一度おさらいします。
誰かを詐欺だと断定する必要はありません。
ただ、私ならこの広告には登録も入金もしません。
| パート | 結局どうだった? |
|---|
| ①発信 | NHKの報道を装い、柳井正氏の名前と写真を無断使用。本人・ファーストリテイリングは無関係と公式に否定 |
| ②勧誘導線 | 登録後すぐに電話で3万1,000円の入金を案内する導線 |
| ③運営実態 | 登録先KairoMaxPathの事業者IDは、国税庁のサイトで『存在しません』と表示 |
もう一度だけ。
柳井正氏本人や登録先の運営者が詐欺だと断定できる証拠は、確認できていません。
ただ、著名な経営者の名前・写真を無断で使い、
本人が公式に無関係だと否定している広告であること、
登録後すぐに電話で入金を勧誘する流れがあること、
そして登録先の表記にある番号が公的サイトで確認できなかったこと、
この3つは、はっきりと確認できた事実です。
有名な経営者の名前を見ること自体は、悪いことではありません。
大事なのは、その名前と、目の前の広告の中身を、
きちんと切り離して見ることだと思います。
確認ポイント
判断に迷ったら
『この広告、大丈夫かな』と迷ったときは、
入金する前に第三者に相談するのが安全です。
編集部のLINEでも、気になった広告の見方を一緒に整理できます。